米:だから後ですることはほとんどない。現場ですごくいい光景に出合って、露出を考えて、場合によっては最適なフィルターを選んで、うまくフレーミングができていれば、もうそこで「撮れた!」って思うから、撮影後の確認もしない。きちんと一枚で撮っておけば、後は家でやることはないから。ワンカットでいい。一回の撮影で一枚いいのがあればもうそれで満足。

菊池:いや、一枚も撮れないなんて、ふつうですよ。相手が自然だからさ。自然にすべてをゆだねることの潔さ、気持ちよさ、みたいなものがある。もう人間の力ではどうしようもないから。そういうところの勝負。だから、雨の日も楽しい、くらいの気持ちで撮っている。

米:やっぱり私たちはそうだよね。撮影現場にたどり着くまでの行程もすべて楽しい。一期一会を楽しんでいる。いい夕焼けにならなかったら、それはそれでしょうがない。またチャンスがあったら撮ろうということで、楽しさが持続するし、それで十分ですね。だから、いいときも、悪いときも、それを受け入れる。撮れなくても自然が「また、来いよ」みたいな。でも、そう思えない人が写真をつくっちゃうんでしょうね。合成することのよろこび、というのは私にはわからない世界かもしれない。この先も。

構成/米倉昭仁(アサヒカメラ編集部)
 
※『アサヒカメラ』2020年4月号より抜粋。本誌では、3人による鼎談の全文とそれぞれの作品をグラビアページで掲載している。

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