北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は働く女性たちの企業を超えた横のつながりについて。

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 韓国ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」。タイトルからは想像できないけれど、年の差のある(女性が上)男女の恋愛を主軸にしながらも、韓国社会の#MeTooや#KuTooの空気が伝わるフェミドラマだった。

 日韓の職場環境は、“女側から”見ると、とても似ている。例えば女性のヒールは“まともな社会人”の証しだが、男性たちは会社では革靴を脱ぎ、ゴム草履で過ごす。大切な接待の場では「美人」が切り札に使われ、コミュニケーションを理由に行われる会社の飲み会では、酔っていれば許される前提でセクハラが横行する。そういう組織では、女性たちは簡単に分断される。声をあげるかあげないか、上司とご飯を食べるか食べないか。差別されるとは、しなくてもいい選択を迫られ、仲間と手をつなげないことだ。

 3月8日の国際女性デーに、大手メディアの女性記者たちが、組織を超え、ジェンダー平等のため連帯しようと声をあげた。

 性暴力に抗議するフラワーデモを呼びかけたことで、全国のメディアの女性たちと知り合えた。社内の性差別に苦しむ人は少なくなく、性暴力問題の企画が通らない現実もある。「事件報道は被害者が気の毒」と却下されたり、「性暴力が問題なのはわかったから!」と逆切れされたり、「女はいいね」と意味不明なことを言われたり、「公私混同」と意味不明な誹謗中傷の体験は珍しくない。

 地方の新聞社には、90年代初頭まで女性トイレがない建物も珍しくなかったという。セクハラを報じながらセクハラ被害に遭う日常だ。そんな男性社会で女性記者が味わう苦悩は、華やかなマスコミの高所得女性の特権などではない。だからこそ、先輩と後輩の縦のつながり、そして社を超えた横のつながりによって生まれた連帯は、革命的だと思う。もうこれ以上、私たちは分断させられるわけにはいかないのだから。

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