稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
2月27日、安倍晋三首相は「全国一斉休校」を要請。危機感とともに買い占めなどパニックが表面化する (c)朝日新聞社
2月27日、安倍晋三首相は「全国一斉休校」を要請。危機感とともに買い占めなどパニックが表面化する (c)朝日新聞社

 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 とにかく何もかも自粛。イベントも飲み会もスポーツもサークル活動も小さな会合もライブもクラシック音楽会も中止。無観客。やれば批判。飲食店、観光業、イベント業、その他関連産業の打撃は計りしれず、自営業の友人から深刻な悲鳴が届く。ああこれじゃあコロナにやられる前に、我らの愛する街も店も音楽もこの世から消えかねないよ!

 政府の専門家会議は、コロナとの戦いは「数カ月から半年、または年を超えて続ける必要がある」と言い始めた。

 なるほどこれは長期戦なのだ。「1、2週間が瀬戸際」という首相発言を私は誤解していた。いっとき耐えれば事態は終わると。だがそういうことではなかったのだ。まだ終わらないしいつ終わるかもわからない。そうとわかれば態勢を立て直そう。バランスを取り戻そう。我々の真の目的はウイルス撲滅ではなくそれぞれの人生を輝かせることだということを思い出そう。人は人との繋がりなくして生きてはいけない。

「やっちゃいけないこと」と同時に「こんな時でもできること」の知恵を出し合う時だと思う。ある専門家が、スポーツ観戦も拍手だけ、隣との間隔を空けるなど工夫できると書いていた。なるほど。願わくばアエラでもそういう特集をしてほしいが、まずは自ら考えた。

●贔屓の飲食店や、宴会をキャンセルした店に一人で顔を出す。言葉少なに笑顔でさくっと飲み、さくっと食べ、さくっと帰ればリスクも少ない。最後に「美味しかった。また来ます」と声をかけよう。

●イベント中止で払い戻しを受けたら、そのお金でクラウドファンディングを検討。

●引きこもるお年寄りが多いけれど、孤立と運動不足のダメージも大きい。近所の散歩はどうだろう。桜を見よう。人を見かけたら笑いかけよう。

●旅行をキャンセルする場合は、先方に電話して「ごめんなさい。騒ぎが収まったら必ず行きます」と一言。そして必ず約束を果たそう。

 できることはなんでもやろう。人を救うのは人。一つの行動、一つの言葉。

AERA 2020年3月23日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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