凍結治療のように外科的な治療をともなわずにがん細胞を直接たたく治療を経皮的局所治療という。腎がんのこの経皮的局所治療は、まだ長期成績が出ていない新しい治療法だ。利点は、からだへの負担が少ないこと、治療による腎機能の低下が軽いことだ。防衛医科大学校病院泌尿器科教授の浅野友彦医師に話を聞いた。

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 現在では、大きさが4センチ以下の腎がんには、腎臓の機能ができるだけ低くならないように、腎臓を全部取るよりも、部分的に切る手術がすすめられています。腎がんで片方の腎臓を取り除いた場合には約6割の患者さんで中等度以上の腎機能障害(腎臓が1分間に濾過できる血液の量が60ミリリットル未満の状態。心血管疾患の危険性が通常よりも1.4倍に高まる)が起こるのに対して、経皮的局所治療では5%、腎部分切除術では約30%です。

 一方で、治療後の同部分再発率は、経皮的局所治療では5~10%、腎部分切除術は0.8~1.6%と、腎部分切除術と比べ劣っています。

 大きな腎がんや、腫瘍が腎臓の中に埋まり込んでいると再発が起こりやすいので、大きさや部位によって治療法を選ぶ必要があります。たとえば、膵臓や小腸、大腸が接している部位にできた腎がんの場合には、周囲の臓器に損傷を与える可能性があるので、経皮的局所治療には向きません。大きさが3センチ以下の腎臓の外側に向かって発生する腎がんに対しては経皮的局所治療の成績は良好です。

 腎がんの経皮的局所治療は新しい治療法で、まだ長期の成績が出ていません。そのため、現在のところ高齢や合併症のため、からだに負担のかかる手術ができない患者さんにのみ実施していることがほとんどです。今後、技術の進歩によって経皮的局所治療の成績がさらに向上し、小さな腎がんに対する治療法の選択肢の一つとなることが期待されています。

※週刊朝日 2012年6月22日号

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