定年まであと何年ですか?
タイミングは人それぞれだが、日々の忙しさに埋もれていると、あっと言う間にやってきそうだ。
「老後資金など、お金の準備について思いを巡らせる人は多いのですが、多くの人は、新たな環境に向けて自らの価値観をゆるめたり、生涯楽しめそうな“好きなこと”を見つける、といった心の準備をし忘れたままで、定年生活に突入します。その結果、がらりと変わる環境や人間関係に適応できず、悩みを深めるケースが多いのです」と、元自衛隊メンタル教官で『50代から心を整える技術』の著者でもある下園壮太さんは言う。
あまり知られていないが、自衛隊は退職年齢が早く、54歳から56歳の「若年定年制」を採用している。下園さん自身も56歳のときに退職し、先輩や同期の人たちが退職後にどのような状況になるかをつぶさに見てきたという。
「定年は、人生にとって大きなターニングポイントになるのは間違いない。その波をうまく乗り越えて充実した日々を歩める人と、うまく乗り越えられず苦しむ人に二極化する現実があります」。
下園さんが目にした“第二の人生”のリアルなエピソードとは――。
* * *
■自衛官の生真面目さと新しい職場のミスマッチ
「若年定年制」を採用している自衛隊では、定年が早く、平均で55歳です。
まだ十分働ける年代で退職するため、組織内には次の働き口を探す「再就職斡旋プログラム」というありがたいシステムがあります。保険会社の損害課など、いろいろな再就職先が斡旋されます。ところが、再就職先に移っても、新たな職場で苦戦している先輩方が多い、という話をちらほらと聞いていました。
どうして新たな職場にうまく適応できないのでしょう。
自衛隊は、規律正しい組織です。だから、真面目な人が多く、「与えられた内容以上の仕事をする」ことで充実感を得る、という仕事ぶりが定着しています。もちろん、そういった姿勢は再就職先でも高評価を受けます。