
「中止よりまし」と安堵が広がった東京五輪・パラリンピックの延期。AERA2020年4月6日号では、延期による経済の影響、延期時期が夏を避けられない背景に迫る。
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「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして、完全な形で東京大会を開催するためにバッハ会長と緊密に連携していくことで一致した」
安倍晋三首相は3月24日夜、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会議で東京オリンピック・パラリンピックを1年程度延期することで合意し、記者団にそう語った。オリンピックは4年ごと。誰もが知る「人類の常識」を、新型コロナウイルスの猛威が覆した瞬間だった。
延期は日本経済にどんな影響を与えるのか。
関西大学の宮本勝浩名誉教授は19日、新型ウイルスの影響で東京五輪・パラリンピックが延期になった場合の経済的損失は、約6408億円になるとの予想を発表していた。中止なら約4兆5151億円の損失と予想しており、最悪の事態は避けられたと言えそうだ。
投資家には安堵感が広がり、延期発表から一夜明けた25日の東京株式市場は買い注文が集中。日経平均株価は一時、取引時間中としてはおよそ2週間ぶりに1万9千円台を回復した。26日には小池百合子東京都知事が週末の外出自粛要請を行ったことなどを受けて一時1千円以上値下がりしたものの、27日の終値は再び1万9千円台を回復している。
「オリンピック・パラリンピックの延期だけなら経済効果の損失は一定程度に収まる。開催する以上、効果は出ますから」
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次さんはそう話す。
「前々から国内外の投資家は、五輪の延期が決まればウイルス対策が徹底できるので短期収束につながるというストーリーを読んでいて、その通りになったので株価が上がった。特に海外の投資家は『東京は本気だ』と感じたのです」
ただ延期の影響には不透明な要素も多く、そもそもの原因となった新型ウイルスの影響はなお見通せない。