「売れなければ不動産価値が大幅に下がり、それが引き金になって都心全体の地価を引き下げる恐れもあります」
選手村の建設場所はもともと都有地だ。都は16年、13.4ヘクタールの土地を大手ディベロッパー11社に約130億円で売却する契約を結んだ。
しかし、この事業計画については、近隣地価の9割引きで払い下げられた、という批判が出たいきさつもあり、今回の延期による情勢変化で、「見直しを迫られるでしょう」と森山氏は指摘する。
ボートやカヌー競技が開かれる「海の森水上競技場」があるのは、東京湾の沖合にある埋め立て地。このため強風が吹いて水面が波立つことが多く、水上競技にはおよそ不向きだとの声がある。くわえて通常、ボート競技は淡水の環境で開かれるが、ここは異例の海水競技場。
こうしたコンディションの大きな違いに、アスリートからの評判もすこぶる悪いという。
「会場整備を急いだため、不具合が目立ちます。延期された1年間を有効利用して、五輪開催までに問題箇所を再点検すべきです」(森山氏)
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2020年4月10日号