忙しい仕事が終わった後や、子どもが巣立つなど大きな責任・役割を終えた後などに、遅発疲労から「荷下ろしうつ」になることがある
忙しい仕事が終わった後や、子どもが巣立つなど大きな責任・役割を終えた後などに、遅発疲労から「荷下ろしうつ」になることがある
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下園壮太(しもぞの・そうた)/心理カウンセラー。メンタルレスキュー協会理事長。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生隊員などにメンタルヘルス、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして約300件以上の自殺や事故に関わる。2015年8月定年退官。現在はメンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ講演などを実施。『心の疲れをとる技術』『人間関係の疲れをとる技術』『50代から心を整える技術』(すべて朝日新書)、『自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数
下園壮太(しもぞの・そうた)/心理カウンセラー。メンタルレスキュー協会理事長。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生隊員などにメンタルヘルス、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして約300件以上の自殺や事故に関わる。2015年8月定年退官。現在はメンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ講演などを実施。『心の疲れをとる技術』『人間関係の疲れをとる技術』『50代から心を整える技術』(すべて朝日新書)、『自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数

 65歳から90歳までの25年は、社会人となってから50代になるまでの月日と、ちょうど同じぐらいの長さ。定年後に過ごしていく老年期は「自らの老いを受け容れながら、生き方を選んでいく期間。まさに、人生の退却作戦です」と話すのは、元自衛隊メンタル教官で『50代から心を整える技術』の著者でもある下園壮太さんだ。

【下園壮太さんの写真はこちら】

 作戦の際には、「最悪のケースを想定」し、「今できることを考える」という2本立てのプロセスが有効だという。定年というターニングポイントも、楽観は許されない退却作戦だ。実は、今、懸命に働いている「頑張り屋」な人こそ知っておきたい「最悪のケース」がある。

 それが、「荷下ろしうつ」。実際に、起こったケースを下園さんに聞いた。

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■原因は思いあたらないのにうつになることがある

 うつといえば、身近な人を失う喪失体験や事故など、大きな出来事や深い悩みがきっかけになる、と思っている人が多いと思います。しかし、何もないのに、うつになることがあります。

「『疲労』が『うつ』を招く! 自衛隊メンタル教官が教える“定年うつ”を避けるために50代で経験しておくべきこと」という記事でもお伝えしたように、疲労は、第1段階、第2段階、第3段階、と進んでいきます。疲れの第3段階になると、それまでの人とはまるで違う「別人化」が起きます。このとき、「死にたい」気持ちが起こることがあります。現実生活があまりにもつらく、死ぬことによって「終わらせる」ことができると思うのです。

 私のとある知り合いは、定年して3年後に亡くなりました。周囲からは、「あんなにずっと元気で快活だった人がなぜ」と不思議がられました。

 その方は、体力自慢で、周囲が定年への準備をしているときにも、なんとかなるだろう、と楽観的でした。ところが、定年前の検診でいくつか異常値が見つかり、とても心配をしていたそうです。さらに、もう一つの心配の種は、長男の就職が難航していたこと。それでも、体力には自信がある人なので、むしろ仕事に精を出すことで、不安や悩みにフタをして乗りきっていたのです。気づかないうちに、疲労が積み重なっていました。

 定年後、しばらくして長男の就職は決まりました。ところが、その人は突然、調子を崩してしまった。労働という明確なストレスがなくなり、長男の心配からも解放され、もう疲れを麻痺させる必要がなくなった結果、どっと疲労が押し寄せた。これが、「荷下ろし」と呼ばれる現象です。

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「落ち込みの理由がない」ことが荷下ろしの苦痛を拡大する