西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、プロ野球がいずれ開幕した場合の対策について言及する。
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果たしてプロスポーツは開幕を迎えられるのだろうか。そんな心配の声すらも自粛しなければならない状況だ。新型コロナウイルスの感染拡大はここに来て、東京都を中心に広がってきている。3月末の週末の外出自粛。生活の行動制限が行われている現状が続くようなら、お客さんを集めての興行なんてできない。
「お客さんへの感染拡大防止へ最善を尽くす」といってもリスクがゼロになるわけではない。やはりプロスポーツにとって、ファンの方々に不安が大きいうちは、スタートを切ることはできない。プロ野球は4月24日の開幕を目指すと3月下旬時点で表明しているが、ギリギリまで見極めた上で、再延期することは致し方ないと考える。
東京五輪の1年程度の延期に伴い、中断する予定だった7月21日から8月13日の24日間に試合を組み込める可能性があるのは救いではあるが、その期間には高校野球の地方大会やイベントなどが入り、すぐに使用できない球場もある。粘り強く12球団と日本野球機構(NPB)がシミュレーションしていくしかない。
たとえ開幕をどこかで迎えられたとしても、大規模イベントは密閉、密集、密接の回避が必要。飛沫(ひまつ)感染の距離は2メートルという説もある。1人のお客さんに対して前後左右2メートル空けたら、50%の空席では足りないだろう。「8割減」と試算する球団もあるという。5万人収容の球場で1万人か。この観客削減も非常に難しい作業となる。
通常の指定席などの1試合ごとのチケット販売とは別に、各球団は年間シートを設定している。年間シート購入者に対し、すべてを払い戻した上で、席数を減らして販売することは物理上可能だろうが、どうやって購入者の選別を行うのだろうか。購入者個別に対応し、今年だけではなく、来年以降への優先購入の権利などを与えなければならない。それだけではない。応援団、観客に対して、声を出すような声援自粛も徹底するという。お金を払ってきてくれるファンの方々に制限をかけるということは本来避けたいことではある。