50代で多いのは子育てを終えた女性たち、と林さん。ある女性は、結婚し子どもも育ててきたが、本当はずっと苦しいと思いながら生きてきた。その気持ちを夫にもわかってもらえず、もう限界だから「死にたい」と打ち明けた。ひきこもりながら親の介護に入っている女性も多く、親亡き後の不安に押しつぶされそうだと話す人もいるという。
「真面目な人ほど良い娘、良い妻、良い母、さらに近年では良い社会人でなければと思ってしまう。主婦であることで周囲もひきこもっていることを問題とせず、心の内に苦しさがあることに思いが至らない」(同)
さらに「ひきこもりUX会議」が実施した「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」では、「既婚女性」が全体の20.1%いることもわかった。埼玉県に住む30代の主婦もそんな一人だ。
「気がつくと、1カ月近く夫以外の人としゃべっていないということがあります」
21歳の時に勤めていた会社が倒産したことで精神的に不安になり、双極性障害と診断された。24歳で結婚し夫の両親と同居していたが、4年ほど前に夫と2人で暮らすようになってから、外とのつながりがなくなった。症状が悪化し寝込んでいると、話し相手は夫くらいしかいない。
夫は優しく病気のことも理解してくれているが、感じるのは「孤立感」。実家とは縁を切り、今までつきあっていた友だちとはライフスタイルが違ってきたので疎遠になった。メディアなどは、地域のボランティアや町内会に参加すればいいと勧めるが、一から人間関係を築くことはとてもできそうにない。自分は今、社会から外れた場所にいて、社会とのつながりが薄い人間になっていると思うと話す。
「誰かとどうでもいい雑談をしたいと思うけど、誰と話していいかわからず、孤立感が深まっていきます」
林さんは、ひきこもりはそれ自体が問題なのではなく、問題は「孤立」することだと話す。
「孤立すると心身が疲弊し、生きる気力も失っていきます」