コロナウイルス拡大の影響で今シーズンの開幕がいつになるのか不透明な状況が続くが、野球を観ることが出来ない今、懐かしいプロ野球のニュースを思い出し“野球ロス”を少しでも和らげてもらいたい。そこで『プロ野球B級ニュース事件簿』シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「バントは怖い!?編」だ。
【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!
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1996年にダイエーに入団したドミニカ出身のホセ・ヌーニェスは、味方のファインプレーのたびにマウンドで派手なガッツポーズを披露する陽気なキャラクター。スリーアウトチェンジになると、ベンチまで全力疾走で帰る姿も好感を呼んだ。
来日初登板となった開幕2戦目、3月31日のロッテ戦(千葉マリン)では、7回1失点で順調に白星スタート。だが、そんなホセにもバント処理が大の苦手という弱点があった。
4月13日の近鉄戦(福岡ドーム)、ホセは1回、先頭の内匠政博を3球三振に打ち取るが、2番・大石大二郎がセーフティバントで三塁線に転がすと、マウンドから1歩も動けず、呆然と見送った。
2回にも水口栄二がバントの構えで揺さぶると、「すぐダッシュしなければ」と焦るあまり、制球を乱して四球を献上。直後、連打と犠飛で失点を重ね、負け投手になった。
そして、5月7日の近鉄戦(日生)で、“世紀の珍プレー”が演じられる。
初回にボークなどで3点を失ったホセは2回1死一塁、大村直之に三塁線ギリギリのセーフティバントを決められると、なんと、ボールに向かってフーフーと息を吹きかけ、ファウルにしようと試みたのだ。結果はもちろん失敗で、内野安打となった。直後、味方の守乱にも足を引っ張られ、3回途中7失点KO。この試合を最後にリリーフに回された。
ところが、リリーフデビューをはたした同11日の西武戦(福岡ドーム)でも、バント攻めに泣かされる。
2点リードの8回に3番手として登板したホセは、この回を3者凡退に抑えたものの、勝利目前の9回無死一塁、松井稼頭央に投前セーフティバントを決められた直後、河田雄祐の送りバントを一塁悪送球して1失点。さらに犠飛で1点を失い、勝てたはずの試合を引き分けにしてしまった。
さすがにこれではまずいというわけで、その後、武田一浩をインストラクターにバント処理を特訓。その甲斐あってか、6月に1勝8セーブを記録して月間MVPに選ばれたのは何よりだった。