日本人の4人に1人、約2963万人が使用しているともいわれている「入れ歯(義歯)」。失った歯の代わりになる大切な人工臓器だが、歯ぐきとのすき間に細かい食べかすがはさまるなど、ぴったり合わずに困っている人もいるはずだ。快適に使えるようになるための改善策を専門家に聞いた。
鶴見大学歯学部病院補綴(ほてつ)科の大久保力廣教授が力を入れているのが、金属の「チタン」を骨組み(フレーム)に利用した「チタン床義歯」だ。チタンには次のような利点がある。大久保歯科医師が解説する。
「チタンは軽いうえに、腐敗しにくい特長があります。また、生体となじみやすいので、アレルギーの心配がほとんどありません。さらに、新たに歯が抜けた場合でも、一から作り直す必要がなく、レーザー溶接で継ぎ足せば、リフォームすることも可能です」
20年ほど前にも実用化が検討されたが、加工がむずかしかったため、広く普及しなかった。ところが近年、鋳造機が進歩するとともに、コンピューターを利用して形を削り出すシステム(CAD/CAM)も普及して、チタンの加工が簡単にできるようになった。
チタンは原材料も安い。保険は利かないが、総入れ歯(上下いずれかのみ)を25万~35万円で作ることができる(鶴見大学歯学部病院の場合)。保険が利く材料の金銀パラジウム合金は現在、取引価格が高騰している。また、保険外でよく使われるコバルト・クロームはアレルギーを起こしやすい。
「これらを考えると、チタン床義歯がおすすめです」(大久保歯科医師)
※週刊朝日 2012年5月25日号