県内では、コロナウルス感染者の治療をした病院の関係者や家族にまで嫌がらせが及んでいるという。

「徳島県の病院に入院中の方に感染が確認され、その病院の関係者や家族の方が施設の利用を断られるなどの嫌がらせがあったようです」(前出の県危機管理政策課の担当者)

 岩手県では4月17日、千葉県から里帰りしていた妊婦が破水し、二つの県立病院に救急搬送されたが、次々と受け入れを拒否された。

 その後、女性はPCR検査で陰性が確認され、民間病院で帝王切開による出産をしたという。県内ではこんな疑問の声も出ている。

「妊婦の感染の疑いがゼロではなく、院内の感染対策が準備不十分で、受け入れできなかったようです。妊婦の感染の有無にかかわらず、救急の症例でもありますので、受け入れたほうがよかったのではないか」(県庁関係者)

「不要不急で県境をまたがないように」という要請は、「県境」を意識させ、地域共同体のムラ意識をも呼び起こすことになったようだ。

 新型コロナ対策をめぐっては、安倍晋三首相の方針にはない、独自の感染防止策を掲げた地方自治体も相次いだ。東京都立大学の宮台教授は、こう評価した。

「日本も州(state=国)の集まりであるアメリカに少し近づいています。政府が頼りにならないので各自治体が独自に決定していくわけです。そもそも政府には各地方の事情を把握する力は全くない。知事たちが『安倍とともに去りぬ』を避けたいのは当たり前です」

 そのうえで、コロナ差別について、こう読み解いた。

「コロナ禍で不安なのは当然。諸外国も似たようなもの。問題は日本人がゼロリスクを求める『安心厨』だらけなこと。背景は二つです。第一に、同調圧力になびく者は、同調しない者を見つけると自分を否定されたと噴き上がる。第二に、オカミ依存で思考停止する者は、オカミに逆らう意見や振る舞いに、不安をあおるのかと激高する。どちらも『不安だからこそ仲間と知恵を出し合う工夫』ができず、『不安なのはお前のせい』と差別に走る。それが恥さらしだと自覚できないほど感情的に劣化した連中がうようよしています」

 不安だからこそ、みんなで知恵を出し合いたい。(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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