それが14年から、放射性ヨウ素内用療法が効かない進行性の甲状腺がんに、分子標的薬が使えるようになった。現在、甲状腺がんの中でも分化がんというタイプには3剤が承認されている。ただし、進行が極めて速い未分化がんというタイプでも、効果が期待できる。

 神奈川県立がんセンターの岩崎博幸医師はこう話す。

「副作用などで使い方が難しい薬剤ですが、患者さんに合わせて適切に使えば、非常に効果のある治療となります」

■セカンドオピニオンとるべきケース

「乳頭がんで高リスクなら全摘、低リスクなら葉切除で異論が出ることはまずありません。しかし、中リスクの場合、全摘か葉切除か、医師の間でも判断が分かれる場合があります。全摘すれば甲状腺に再発することはありませんが、失われるホルモン分泌の働きを補うために甲状腺ホルモン剤を生涯服用することになります」(岡本医師)

 全摘に特有の手術合併症もある。甲状腺のすぐ近くにある副甲状腺の機能が損なわれれば、血液中のカルシウム濃度低下に伴う症状を招く。

「一方、葉切除なら甲状腺の働きを維持できることが多く、副甲状腺の働きも保たれますが、温存した甲状腺にがんが再発することがあるかもしれません」(同)

 また、甲状腺がん手術では首元の手術創を気にする患者も多い。これに対して、より小さな傷痕で済む内視鏡手術が一部の病院で実施されている。

「傷痕を少しでも小さく、目立たないようにしたいご希望があれば、内視鏡手術ができるか聞いてみましょう」(同)

≪セカンドオピニオンをとるべきケース≫

ケース
全摘と言われたが、葉切除でできないのか聞いてみたいとき

診療ガイドラインでは、高リスクなら全摘が推奨されているが、中リスクなら全摘と葉切除に分かれている。リスク分類を確認し、葉切除の可能性を聞いてみよう。

ケース
内視鏡手術ができる可能性や、傷口の大きさを確認したいとき

通常の手術でも傷を小さく、目立たないようにする工夫がなされているが、内視鏡手術では首元以外の場所に傷を付けてアプローチする。どちらにしても、どのような傷が残るのかを確かめておきたい。

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手術に慣れた専門医ならば合併症のリスクは低い