それゆえ、容姫氏が在日コリアンであることはタブー視されてきた。しかも、容姫氏の妹夫婦は脱北し、米国に亡命している。そんな容姫氏と不倫の末に生まれた3人の子ども(正哲、正恩、与正の各氏)の存在を表舞台に出すのは、容易なことではなかった。そうした事実をすべて包み隠し、本来、傍系だった容姫の神話づくりが遂行されていったのである。

「金日成氏は94年に死去していますが、容姫氏のこともその子どもたちのことも知らないまま亡くなっています。正恩氏も与正氏も祖父である日成氏と会ったことがないはずです。いろいろな経緯はあったとはいえ、正男氏は長男ということもあって、幼いころに日成氏が抱っこしてあげたという話が伝わっています。ところが、正恩氏ら3人の子どものことは存在すら知らなかったようです」

 白頭血統はもはや偶像でしかない。だからこそ、正恩氏は疑心暗鬼になり、粛清に次ぐ粛清による恐怖政治で権力を掌握する必要があったのだ。

 今回、正恩氏の「重体説」や「脳死説」はガセだったが、20日間も雲隠れしていた理由は謎のままだ。心疾患など健康不安があることは否定できない。あるいは、本人または指導部で新型コロナウイルスの感染が起きていたのか。

「この先、正恩氏に何かあった場合、与正氏の中継ぎ体制になることはまちがいないと思いますが、北朝鮮の政情不安を警戒する中国が水面下で必ず介入してくるはず。“ポスト金正恩”は先行きが見通せません」

(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事

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