昨年の東日本大震災で大きな被害はなかったと東電より発表されている福島第二原発だが、その発表と実際の状況は違うと、福島第二原発で働くジャーナリスト・桐島瞬氏は否定する。
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東電関係者は当時の様子をこう語る。
「通信が途絶えてフクイチ(福島第一原発)で何が起きているのかよくわからない状況の中、フクニ(福島第二原発)の人間も原子炉の冷却系などが失われたことに危機を抱いていた。原子炉の温度が上がり、震災のあった夜中には、『注水用のホースを700本用意しろ』との指示が出たほとだ」
まさに、フクニも、危機一発だったのだ。
フクニ内で毎日、震災被害を目のあたりにし、東電の発表する内容が実際の状況と食い違うことがわかってきた。一例を挙げよう。
東電は昨年5月、フクニについて、「3、4号機タービン建屋は被害なし」と断定している。
いまさら、東電の発表をうのみにするかたも少ないとは思うが、階段の壁に紙が貼られ、そこには手書きでこう書かれている。
「2011・3・11(水没)床面より約430cm」
東電の発表では「被害なし」となっている場所に、4メートル以上の浸水があったことが明記されているのだ。
これを東電がどう説明しているか。昨年12月の「福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」では、1~3号機タービン建屋の地下で浸水が確認されたことを認めた。だが、今年3月11日に発表した「福島第一原子力発電所この1年」では、「3/4号機タービン建屋は被害なし」と断定し、中間報告書で認めたはずの浸水被害がいつのまにか消えている。
さらに驚くべきことがある。東電が昨年8月に発表した「福島第二原子力発電所 東北地方太平洋沖地震に伴う原子炉施設への影響について」では、この被害が載っているのだが、「淡水の漏えい状況」として、漏水の原因を「サージタンクのオーバーフロー水がオーバーフローしたものと確認」と記載、「地下2階全域に浸水及び浸水跡を確認」している。
しかし、現実は「浸水」というより、「水没」である。タンクの水があふれかえったのはなぜなのか。津波とは無関係と言えるのか。
週刊朝日 2011年5月4・11日合併号