戦国武将を代表する織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。この3人の陣羽織(じんばおり)や胴服(どうぶく)を、実際に見ることができる展覧会が東京国立博物館で開催予定だが、新型コロナ感染拡大の影響で延期されている。強烈な個性の違いが、ファッションセンスにも見てとれる。
* * *
背中一面を覆うのは山鳥の黒い羽根。その中央には、白い羽根を1本ずつカッティングして植え付けた平氏の代表的な家紋「揚羽蝶」。あの織田信長が、実際に身につけたとされる「陣羽織(じんばおり) 黒鳥毛揚羽蝶模様(くろとりげあげはちょうもよう)」だ。
信長といえば、人と違ったいでたちや振る舞いを好んだことから「おおうつけ」と呼ばれていたことが知られている(『信長公記』)。この陣羽織からもその一端が垣間見える。
東京国立博物館で開催予定の特別展「きもの KIMONO」は、戦国武将が着用したものから室町時代の小袖、江戸時代の若衆の振り袖、現代に生きる逸品まで、約300点に上る着物を集めた大規模な展覧会だ。
なかでも注目は、戦国時代を代表する信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人がそれぞれ着用した陣羽織と胴服(どうぶく)だ。
戦国時代、武将たちは戦場で自らの存在をアピールするため、変わり兜(かぶと)をかぶり、個性あふれる鎧(よろい)を着けた。彼らが残した着物にも、まごうことなき個性が見てとれる。
「きもの展」を企画した研究員である、東京国立博物館の小山弓弦葉(おやまゆづるは)さんはこう話す。
「おおうつけと呼ばれるぐらいはたから見れば馬鹿げた格好でも、本人は格好良いと思っていたはず。信長がファッションセンスにおいて独自の美意識を持っていたことは、この陣羽織にも表れています」
着物に模様を描くというと、今も昔も一般的なのは織物や刺しゅう。信長の「鳥毛で模様を表す」という発想には驚かされる。安土桃山時代には他にも、陣羽織に鳥毛を用いた例はある。