西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、部活動がままならない状態の生徒たちの心を支える存在として、指導者の役割は大きいと指摘する。
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高校スポーツの祭典と言える全国高校総合体育大会(インターハイ)の史上初となる中止が4月26日に決まった。例年夏は全国から30競技に3万人規模の選手が参加する集大成の舞台だという。春の選抜大会も中止となって、スポーツに真剣に打ち込む高校3年生にとっては、全国で自分の実力を証明する機会が失われる競技もある。かける言葉もないくらい厳しい状況だ。
高校生は、政府の緊急事態宣言が出されているうちは、学校も休校となり、部活動もできない。この期間がどれだけ延びるかで、夏の甲子園の開催も厳しくなるだろう。
練習のノウハウや自分の体のことを知り、コンディショニング能力のあるプロ選手とは「自主練習」の質も違う。休校が解け、部活動を再開できたとしても、しっかりと練習を積まなければ試合で故障する。
ただ、センバツの中止決定の時もそうだったが、主催者は「部活動が再開される」と信じ、最後まで開催に向けて準備をしてほしい。中止という判断は6月20日から予定されている地方大会が始まる寸前にだってできるわけだから。
高校生だけでなく、小、中学校のクラブ活動もできていない。小、中学校の前を通っても、普段なら元気な声が聞こえるのに、静まりかえっている。年齢が若くなればなるほど、指導者の助けが必要であるはずだし、成長を遂げるために一番大事な試合もない。スポーツ界にとって危機的な状況でもある。
高校球児に「開催の可能性を信じて……」といくら声をかけても、それを目標ととらえ、日々の自主練習で自らに厳しいノルマを課すことは難しい。指導者は、そんな球児の心を、SNSなどを通じて、全力で支えてあげてほしい。日々のちょっとした頑張りに気付いてあげてほしい。グラウンドで指導する機会が失われている今、あらゆる手を講じて選手に寄り添ってもらえることを願う。