入れ替え戦の立教‐成蹊で、試合終了後のスコアボード。23‐21で立教が勝利したが、実は最後のプレーの直前まで16‐21で負けていた=2019年12月7日、埼玉県熊谷市の熊谷ラグビー場、立教ラグビー部提供 (c)朝日新聞社
入れ替え戦の立教‐成蹊で、試合終了後のスコアボード。23‐21で立教が勝利したが、実は最後のプレーの直前まで16‐21で負けていた=2019年12月7日、埼玉県熊谷市の熊谷ラグビー場、立教ラグビー部提供 (c)朝日新聞社
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立教のヘッドコーチ、西田創さん (撮影/中島隆)
立教のヘッドコーチ、西田創さん (撮影/中島隆)
昨季の関東大学対抗戦の成績 (週刊朝日2020年5月22日号より)
昨季の関東大学対抗戦の成績 (週刊朝日2020年5月22日号より)

 5年ぶり1部昇格、明治との定期戦で51年ぶりに勝利。立教ラグビー部にとって昨年は大きな飛躍を遂げた年でした。その原動力には組織論「識学」がありました。あいまいさ、なあなあ、無礼講。それら日本的な考え方を許さない組織論とは。

【写真】立教のヘッドコーチ、西田創さん

 まず、関東の大学ラグビーについて少し説明させてください。

 対抗戦とリーグ戦があります。対抗戦には、1部にあたるAグループと2部にあたるBグループがあります。それぞれ8チームが所属しています。

 Aグループには早稲田、明治、慶応、帝京といった強豪校が、ずら~り。秋に総当たり戦を行い、7位と8位は、Bの1位と2位との入れ替え戦をします。

 昨年12月、埼玉県谷市にある熊谷ラグビー場で、Aの8位だった成蹊とBの1位だった立教がぶつかりました。Bグループで圧勝してきた立教は後半、最後のプレーで逆転、23‐21で5年ぶりのAへの昇格となりました。

 立教は同年6月、明治との定期戦で51年ぶりに勝利するなど強くなっています。そして、ここが識学を取り入れているのです。

 3月下旬のお昼すぎ、埼玉県富士見市にある立教のグラウンドを訪ねました。ラグビー部の部員20人ほどが、パスの練習をしていました。

 横に4人並んで走りだしました。ボールをパス、パス、パス。4人の横に控えたマネジャーが言います。

「45、50、37」

「52、40、39」

 スピードガンで速さを測っているのです。

 速いパスを出せと言われても、速いってどのくらいか、あいまいでわかりません。そこで今年、こうしました。

 時速45キロがスタンダード(標準)、45キロに届かないパスは遅い、とみなし、50キロを目指す。

 この仕組みを考えたヘッドコーチは……、

 西田創(つくる)さん、37歳。

 西田さんは2002年、高校ラグビーの名門、東福岡高から立教へ。その年、BからAに昇格する立役者となりました。ただ、Aでは1勝できるかどうか。立教は15年、成蹊との入れ替え戦で敗れてBに降格。翌16年からの3年間、入れ替え戦で成蹊に昇格を阻まれてきました。

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