指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第18回は、目標設定と「守りの努力」について。
【写真】北京五輪男子200メートル平泳ぎを制して、2大会連続2冠を達成した北島康介
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北島康介が大学2年の夏、横浜で開かれた2002年パンパシフィック選手権の会場で、「北島が世界新を出す想定で話が聞きたい」と頼まれ、この連載を担当する堀井記者からロングインタビューを受けました。
将来の目標を聞かれたとき、「スポーツ選手は勝ち続けることで尊敬される。北島をそんな選手に育てたい」と語り、まずは2年後のアテネ五輪の平泳ぎ2種目で金メダルを取り、さらに6年後の北京五輪でも2大会連続で2種目2冠を達成したい、と話しました。
その時点で北島の世界大会のメダルは前年の銅メダル一つだけ。目標を聞いて記者は目を丸くして驚いていましたが、世界では自由形短距離で五輪2大会連続2冠のアレクサンドル・ポポフ(ロシア)ら長年にわたってライバルの挑戦をはねのける本当に強い選手がいました。「日本の選手もできないはずがない」という思いがありました。
北島の人生をかけた挑戦が実って五輪2大会連続2冠は達成されました。明確な目標を持つことで困難を乗り越えられたと思います。
強い選手に共通しているのは、調子が悪いときでもある程度の結果を残すことです。絶好調のときに好成績を出すのは当たり前。勝負強い選手に育てるためには、「最悪の中の最高」を上げる指導が必要です。
自分の目標に向けて、毎日の練習をきちんと繰り返すことで、「最悪の中の最高」は上がっていきます。調子が悪い日も踏ん張って、できるだけタイムを落とさない。地味で苦しい「守りの努力」が底力へと結びついていくのです。
国から7都府県に緊急事態宣言が出た1週間後の4月14日、日本水泳連盟は中止となった日本選手権、ジャパンオープンの開催時期について発表しました。