※写真はイメージです (GettyImages)
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 人生で最も費用対効果が高い節約術は、「生前整理」かもしれない。生前整理とは、生きているうちに自分の死や老いに備え、不用品を整理したり、資産状況などを把握し、相続に備えること。

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 生前整理・遺品整理業を手がける「プロバイド」(名古屋市)の代表取締役で、生前整理診断士の三浦靖広さんは、「生前整理をしなかったために、100万円近くのお金を無駄にしたうえ、精神的に大きな負担を強いられたケースもあります」と話す。実際にあった事例をもとに、有益な生前整理について聞いた。

■9歳のころに両親が離婚

 愛知県の小宮美鈴さん(50代、仮名)の両親は、小宮さんが幼いころから喧嘩が絶えなかった。父は酒とタバコが好きなサラリーマン。仕事のストレスからか、酒を飲むと機嫌が悪くなることが多く、母に辛く当たることも少なくなかった。

 小宮さんが9歳のころ、両親は離婚。母は小宮さんを残して家を出てしまう。生活の基盤が整ってから小宮さんを迎えに行くつもりで、母はしばらく自身の実家で生活。月に数回は小宮さんに会いに来た。

 ところが、小宮さんが中学生になったころ、母は別の男性との再婚が決まる。小宮さんは再婚相手との同居を拒否し、そのまま父と暮らすことを選択。

 その後小宮さんは結婚し、式には母も出席。長男出産後には産褥期(さんじょくき)の小宮さんをサポート。3年後には次男を出産したが、その後も母は小宮さんの息子たちの成長を見守ってくれた。

 自動車販売業を営んでいた小宮さんの夫は、友人の勧めで焼肉店を始める。店の経営は順調で、3店舗を営業するまでになった。

 しかし2008年のリーマン・ショックのあおりを受け、翌年に夫の会社が倒産。自宅を担保に金融機関から借り入れをしていたため、引っ越しを余儀なくされる。

 小宮さんの父は、すでに肺がんで他界。貯金もなく、住む家も失ってしまった小宮さんは、家族4人で母の家に転がり込むことに。母の再婚相手も5年ほど前に亡くなっており、その男性との間に子どもはいなかった。相手の男性には2人の息子がいたが、どちらも成人して家を出てからは、母との交流は途絶えていた。

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母の突然の死