新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業も人も多くが苦境に立っている。カギを握るのは地域に根差した独自の対策。様々な財政事情を抱えながらも知恵を絞って難局に当たる自治体たちを徹底取材した。
【表の続き】財政力がある自治体 独自の対策を進める主な市区町村はこちら
コロナ危機が年をまたいでも収束しなかった場合、自治体も“息切れ”してしまう可能性がある。そこで本誌は、独自の対策を打ち出した主な市区町村の財政力を調べた。
すると独自の対策に取り組む自治体には、経費に対する収入の大きさなどから算出される財政力指数が高いか、自治体の「貯金」にあたる財政調整基金の残高が多いところが少なくなかった。
財政力指数が1を上回る御殿場市(静岡県)は、東京など7都府県に緊急事態宣言が出された後、バーやナイトクラブに休業要請を行った。御殿場には新天地という有名なスナック街がある。
独自の休業要請とセットで、市は上限100万円の休業補償も用意した(のちに200万円に引き上げ)。休業期間当初から、約200店舗あるうちの100店舗以上が休業に応じたという。市の担当者は「休業要請と補償はやはり、セットでないと。市内ではまだ感染者が出ていません。効果があった」と手ごたえを語る。
財政力がある自治体にはほかにも、17歳以下の子どもに1人あたり1万円を給付する舟橋村(富山県)や、全町民に5千円分の地域通貨を支給する奈義町(岡山県)など、手厚い支援策が目立つ。県の協力金の対象にならない宿泊業者などへの緊急支援補助金を独自に設けた神奈川県箱根町も財政力指数は1.42と1を大きく上回る。
ただし、財政力ばかりが決め手ではないという見方もある。「今回のような緊急時には財政基盤よりも、首長のリーダーシップがより大きく影響するのでは」と指摘するのは、日本総合研究所の松岡斉理事長だ。
「緊急時の支援策に一般予算を充当していては時間がかかりすぎます。例えば『新型コロナウイルス感染症あかし支え合い基金』という名称で市民からの寄付を募る兵庫県明石市のように、通常の予算枠外から資金を調達している自治体もある。集め方の工夫など、首長のアイデアがモノを言うと思います」(松岡氏)
首長のリーダーシップも目立つ。
松岡氏が挙げた明石市は、個人商店への家賃2カ月分(上限100万円)の融資や、大学・大学院・専門学校などに通う学生を対象に前期分の学費(上限60万円)の貸し付けなど、国や都道府県を上回るスピードで計10に上る施策を次々と打ち出し、全国的な話題になった。泉房穂市長は昨年、職員への「暴言」が問題視されたこともあるが、今回は強い指導力が奏功したかたちだ。