作家・林真理子さんの「マリコのゲストコレクション」は連載開始25周年。今回は、ご登場いただいた女性ゲストの中から、「生き方を考える言葉」を教えてくれた女優・市原悦子さん(1998年3月13日号)です。
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「まんが日本昔ばなし」や「家政婦は見た!」など、昭和から平成にかけて60年もの間活躍した、女優の市原悦子さん。対談にご登場いただいたのは、「家政婦は見た!」の連ドラ化で巻き起こった「エツラー現象」真っ只中。女子高生にまで「エツコ~」と声をかけられる近況について、マリコさんも興味津々で──。
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市原:街を歩いていて、「キャー」って黄色い声を出されたとき、私、虫の居どころが悪いと、「キャー」って言い返すんです(笑)。穏やかなときは、笑って通り過ぎますけど。あの黄色い声がイヤなの。
林:黄色い声がかかるっていうのはほんとのスターだと思いますよ。私の場合、「ほらほら」ってひそひそやられるだけ。「キャー」って言われてみたいです(笑)。市原さん、お顔もですけど、お声も全然年とらないから、女子高校生たちより、断然声が通りそう。
市原 私が「キャー」って言い返すと、びっくりしてます(笑)。
*中略*(以下、*)
林:「私たちも人の悪口大好きなんですよ」ってときどき言われるんですけど、私、人のこと悪く書いたことないのにって思うんです。
市原:私も、のぞいてるつもりはないけど、のぞいてるって言われますね(笑)。
林:私、通いの家政婦さんに来ていただいているんですけど、「家政婦は見た!」を見て以来、ちょっと怖くなっちゃって、手紙類はちゃんとしまっておこうとか、いろいろ考えさせられました(笑)。
市原:北林谷栄さんも、番組が始まったころ、「怖いから、もう家政婦は雇わない」って言ってました(笑)。
林:市原さんは?
市原:雇いません(笑)。たまにお掃除は頼むこともありますけど。
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林:失礼ですけど、市原さん、ご家庭ではいい奥さまなんですか?
市原:いやー、けっしてそんなことはないでしょうね。お互いに困るでしょう、そういう話題は。ホホホホ……。
林:いえ、自分で言うのもなんですが、私はほんとにいい奥さんなんです。だれも信じてくれないんですけど、毎朝七時に起きて、夫に朝食も作って。
市原:へぇー、あれだけ本を書いてらっしゃるのに?
林:でも、根本的に何かが欠けてるみたい。よく怒られます。*いい母、いい妻、しかも一流の女優さんでいるって、ちょっと不可能ですよね。
市原:はい、そう思います。
林:女優さんって、うちにお帰りになるころは、クタクタなんでしょう。
市原:やっぱり、人に見られてるってことは、麻薬なんでしょうね。だけど、ショボクレてるのはあんまりよくありませんものね。だから、みんな外の顔があると思うのね。でも、なるべく地を出して、いいカッコしないでいける人が、息が長いんじゃないでしょうか。表と裏のある人っていうのは、長続きしないでしょうね。疲れちゃって。
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林:くつろがれるときってあるんですか。
市原:はい、くつろがないともたないから。私、趣味ってないんですけど、時間があればマージャンをします。私は弱いから、強い人にカモられそうになると、ハッスルするの。無駄口もきけなくて、二人リーチになったらどうしよう、というのがスリル(笑)。*マージャン付き温泉旅行が楽しいですね。五人で行って、二抜けでお風呂に入って、その繰り返し。もう最高!(笑)
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林:ムカムカして、スタッフに当たったりするんですか。
市原:モメたり、ケンカしたり。あ、ケンカと言ったらいけませんね。話し合いをします(笑)。*(意見が)ぶつかればぶつかるほど楽しいですね。全面的に肯定するんじゃなくて、おもしろい部分を取り込んだり。だから、自分より遠い役のほうがおもしろいですね。
※週刊朝日 2020年5月29日号