ミャンマー国会補欠選挙で45議席中43議席を獲得し、野党・国民民主連盟(NLD)を圧勝に導いた党首・アウンサンスーチー氏(66)。記者が、美魔女とも呼ばれる美しい彼女の素顔を見た。
 通算15年の自宅軟禁の間にすっかり「メー・スー(スー母さん)」と呼ばれる年齢になったが、間近に見るスーチー氏の顔にしわはなく、姿勢の良さや立ち振る舞いの美しさは健在だった。
 車での全国遊説移動中、貧しい少女が路傍でつみ取ったばかりの花束を渡したことがあった。スーチー氏はその花束から数本を抜き取り、後ろに束ねた髪にそっとさした。軟禁中から変わらぬ、髪飾りの花とイヤリング、清楚な民族衣装のブラウスとロンジー(腰巻き)姿。好んで金色の髪留めにさすのは白いバラ。会えずに死別した夫との挙式のときの思い出の花だ。彼女の美しさは民族を問わずあこがれの対象になっている。
 彼女はヤンゴン南部の少数民族カレン族の村から選挙に出た。民族融和のため、彼女自身が選んだのだ。
 雨期には泥川となる片道4時間の悪路をバウンドしながら彼女を乗せた白のパジェロが疾走する。車酔いによる体調不良をおして、村の歓迎舞台に身を運び、ベランダから、
「明日は投票日、今日はもう寝ましょう」
 と手枕のポーズをとりながら、優しく村人に話しかけた。人々は、その「優しさとインテリジェンスあふれる美しさ」を絶賛する。

※週刊朝日

 2012年4月20日号

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