最後に当事者や当事者と生活する家族の食事のポイントを、管理栄養士の足立香代子さんに聞いた。

「どんな食事がよいかと考えるときに参考になるポイントは大きく二つ。体調が悪いか、悪くないかです。体調がよいときは免疫力を上げる食事を、体調が悪いときはなんとか口にできる食事を考えます」

 前者は、たんぱく質多めの食事を。単一の食材ではなく、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品を組み合わせる。もう一つはカラフルな野菜をとることだ。

「たんぱく質は運動不足により体力を落とさないために必要。赤や黄色などの緑黄色野菜には、免疫力を上げるビタミンが豊富に含まれています。見栄えも良くなるので、部屋にこもってストレスがたまりがちな当事者の癒やし効果も期待できます」(足立さん)

 一方、後者ではその状況に応じた食事を提供する。

 例えば、食欲不振のときは少し塩分が濃い料理が望ましい。塩が胃酸の分泌を増やしてくれるからだ。かむのがつらいときは汁物、あるいはかまずにすむ雑炊や麺類にする。

 新型コロナ感染症の代表的な症状である、味覚異常に対しては、見栄え重視の料理で、目でおいしさを感じてもらう工夫を。

「この時期ですから、ゼリーやドリンクといった栄養補助食品も使いましょう。特に、体重が落ちてくるようなら、エネルギーとたんぱく質がしっかり取れる栄養補助食品を利用して。インターネットなどで購入できると思います。それが難しいときは、油を料理に足すことでエネルギーを増やすこともできます」(同)

 家庭内に感染が疑われる人がいると、買い物もしにくい。だが、厚労省によると、家族が食材を買いにスーパーなどに行くことには自粛を促していない。

「ただ、家族も濃厚接触者です。外出時は必ずマスクをして、スーパーに置いてあるアルコールで手指消毒を。入店時だけでなく、帰るときにも使ってください」(前出・永井医師)

 こうした対策は一見、大変そうだが、インフルエンザや食中毒などの感染症予防にも通じる。永井医師は、「身につけた感染対策は強い武器だと思って、つらく大変な時期を乗り越えてください」と話す。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2020年6月5日号より抜粋

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