馬術の法華津(ほけつ)寛(ひろし)(70)がこのほど、今夏のロンドン五輪出場を決めた。23歳で出た東京、日本選手史上最年長の67歳で話題となった北京に続き、71歳で3度目の晴れ舞台に臨む。

 活動拠点にしているドイツへ電話すると、柔らかな口調に喜びがにじみ出た。

「ホッとしましたよ。昨年末までは、ほとんどあきらめてたんですから。本当に奇跡みたいなものですよ」

 出場決定までの険しい道のりを、「人馬一体」で乗り越えていたのだ。

 昨年2月、06年からペアを組む愛馬「ウイスパー」が前脚を負傷。後脚にも異常が見つかった。獣医を訪ね回るも、原因がわからない。11月中旬に手術することになった。手術後、半年は競技に復帰できず、ロンドンは夢へと消える。

 ここでドラマがあった。

「手術当日、担当医に別の緊急手術が入って、1週間延期になりました。そこにオランダの友人から電話があったのです」

 友人は全身麻酔を伴う馬の手術は危険だと指摘し、「いい獣医がいるから、オランダへ連れてこい」と誘ってくれた。この話に飛びつくと、馬が回復していった。

 昨年末には年明けの競技会に出られるメドが立つ。今年に入ってから立て続けに6大会に出場。3月1日の国際大会で優勝するなどして馬場馬術個人の五輪出場枠1を獲得し、日本馬術連盟の選考基準によって代表に内定した。

「最後は馬が頑張ったね。馬の調子がすぐれないときは、私も首が回らなくなったり、腰痛になったり。でも馬が回復したら、私の痛みも飛んでっちゃったよ」

※週刊朝日 2012年4月6日号