大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 暑い季節になると、汗が出ます。これは人間が体温を調整するために必要な機能です。また、汗は、緊張したときにも出ます。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、汗とアトピー性皮膚炎などの病気との関係について解説します。

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 私は皮膚科の医師ですが学会や講演に呼ばれることも多く、国内外の出張が一年を通してあります。忙しいときは週に2~3回、東京と京都を往復することがあり身も心もげっそりしてしまうのですが、新型コロナウイルス感染症の流行により全ての出張がWEB会議に切り替わりました。

 移動がなくなったぶん、体力的にはとても楽になったのですが、自粛解除後に残ったのはコロナ太り。最近はダイエットを兼ねて鴨川沿いを1時間ほど歩いて通勤するようにしています。

 早朝とはいえ、1時間近く川沿いを歩くと全身に汗が吹き出ます。天気の良い晴れた日は日差しも強く、日光蕁麻疹(じんましん)をずっと患っている私は職場に着くとしばらくかゆみと闘うことになります。

 暖かくなってくると皮膚科の外来には患者さんが増えます。紫外線の影響、虫さされ、水虫、そしてあせも。なかでもアトピー患者さんが汗で悪化する場面にたびたび遭遇します。

 もともと汗は体温を調整するために必要です。人間の体にはエクリン腺とアポクリン腺と呼ばれる二つの汗を出す素(もと)があります。エクリン腺は全身に広く存在し、エクリン腺からの汗は体温調整に関わります。一方、アポクリン腺は脇や股に存在し体臭の原因になります。

 また、手のひらや足の裏など毛がない部分からの汗は緊張により出てくることも知られています。

 緊張が原因の精神的発汗は、アポクリン腺からも起きます。そのため、緊張して汗をかくと手のひら以外にも脇がじっとりし、体臭の原因になります。

 さて、アトピーの患者さんは夏場に汗をかくと悪化することが多くあります。

 これは汗の成分がアトピーを悪化させるためと考えられています。

 広島大学皮膚科の研究グループは2013年、汗に混入したカビの成分(マラセチア由来の成分)がアトピーの症状を悪化させていることを発見し報告しました(J Allergy Clin Immunol. 2013 Sep;132(3):608-615.e4.)。

 また、アトピーの患者さんの一部には金属アレルギーを併発していることが知られています。金属アレルギーの原因となるニッケル、コバルト、クロムは3大原因金属とも呼ばれ、ピーナツ、アーモンド、チョコレート、コーヒーなど多くの食材に含まれています。

 これらの金属は体に吸収された後、汗として排出されるルートが人間の体には備わっています。そのため、金属アレルギーのある患者さんは、汗で皮膚に出てきた金属の影響で湿疹が起きる可能性も指摘されています。

 このように、アトピー患者さんは汗で症状が悪化することが多いのですが、意外なことに汗そのものはかきにくい体質となっているようです。

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