栃木県日光市で行われたアイスショーで観客に手を振るデニス・テンさん=2017年8月(C)朝日新聞社
栃木県日光市で行われたアイスショーで観客に手を振るデニス・テンさん=2017年8月(C)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る
デニス・テンさんが亡くなった場所には花束などが置かれていた=昨年7月、カザフスタン・アルマトイ、大崎百紀撮影
デニス・テンさんが亡くなった場所には花束などが置かれていた=昨年7月、カザフスタン・アルマトイ、大崎百紀撮影
無良崇人さん(C)朝日新聞社
無良崇人さん(C)朝日新聞社

 2年前に25歳で亡くなった2014年ソチ五輪のフィギュアスケート男子銅メダリスト、デニス・テンさんの名を冠した「デニス・テンフィギュアスケートアカデミー」が今年末、テンさんの故郷、カザフスタン・アルマトイで創設されることになった。同国のメディアが報じた。

 テンさんはカザフスタン初のフィギュアスケート五輪メダリスト。国民的英雄として、母国で普及活動にも力を入れていた。だが、18年7月19日にアルマトイの路上で強盗に遭い、刺されて亡くなった。

 報道によると、同アカデミーは、テンさんの遺志を継ぐデニス・テン財団が設立する。子どもたちに最高の指導者の下で練習する環境を提供するのが目的で、アルマトイのフィギュアスケート人口を2倍に増やしたいという。アルマトイでは現在、500人以上の子どもたちがフィギュアスケートを楽しんでいる。

 同財団は、10年バンクーバー五輪女子銀メダリストの浅田真央さんを指導したタチアナ・タラソワコーチ(ロシア)や、同五輪男子金メダリストのエバン・ライサチェクさん(米)を育てたフランク・キャロルコーチ(米)にも、アカデミーへの参加を呼びかけているという。テンさんはライサチェクさんの滑りに憧れていた。

 フィギュアスケートライターの田村明子さんはこう話す。

「デニス・テン財団によるデニス・テンフィギュアスケートアカデミーの創設、うれしいニュースとして読みました。同時に、若くして私たちの前から消えてしまったデニスのことを思い出し、改めて胸が詰まりました。生前、何度かインタビューさせてもらった際に、カザフスタンでスケートを始めた当初は屋外リンクで、あまりの寒さに着膨れし、『まるでキャベツみたいだった』と笑っていたことを覚えています。その後、より良い環境を求めてロシア、そして米国に拠点を移していったデニスですが、カザフスタンに初のISU(国際スケート連盟)メダルをもたらした彼にとって、祖国で後継者を育てることは悲願だったと思います。体はもうこの世に存在しなくても、デニスの精神はこれからも生き続けるのでしょう」

次のページ
無良崇人さん「本当にすばらしい」