元東京高検検事長の黒川弘務氏が、賭けマージャンで辞任に追い込まれて1か月。法務省は黒川氏に退職金、5900万円を今週にも支払うことを国会で明らかにした。
賭けマージャンが週刊文春に報じられた後、自己都合で退職したことで、退職金は一部が減額されたという。国民民主党・原口一博衆院議員はこう指摘する。
「賭けマージャンを認めて、内規の訓告処分を受けている黒川氏は、本来なら懲戒処分相当だ。それに賭けマージャンの全容がはっきりしておらず、さらに調査が必要だ。まだ問題は終わっていないのに、巨額の退職金を受け取ることに、違和感がある」
“官邸の守護神”と言われた、黒川氏。今後、安倍政権への批判にもつながりかねない。
「黒川は脇甘い、自覚が足りん。東京高検の検事長、次に検事総長という立場にいながら賭けマージャンやから、なおさらやな」
こう怒るのは、元検事総長の土肥孝治弁護士だ。
黒川氏の「賭けマージャン」「政治との深い関係」など一連の問題について、本誌のインタビューに応じた。
土肥氏は大阪地検特捜部時代にタクシー汚職事件で現職の国会議員を逮捕した経験を持つ。大阪地検検事正時代には戦後最大の経済事件と呼ばれた、イトマン事件などを手がけた。検事総長時代には、旧住専問題にメスを入れた。検事総長経験者では、数少ない現場派だ。
一方、黒川氏は法務省事務次官の座に5年間など、法務官僚としての手腕を買われて出世してきた「赤れんが」派だった。
「検事から法務省に出る、現場で頑張る検事、どちらも心の持ち方。検事としては、政治と近づきすぎてはいけない。政治家と特別、仲良くなってはいけない。そういうことが評判になることも、避けなければいけないのが検事の鉄則だ。定年延長を迎え、検事総長なるかと言われた黒川。結果的に官邸側、政治に寄っていたという気がする」(土肥氏)
土肥氏が検事総長就任間もない1996年――。検事総長の部屋と法務大臣の部屋は、同じフロアにあったそうだ。