プロデューサーのエイミー・パスカルは、「四姉妹が他の誰かの物語に仕えるために存在するのではないの。自分の物語と他の人の物語のため」と語った。彼女の言葉通り、4人の「意思」が原作よりも強調される。自分はどういう人間か、どうなりたいのか。それぞれが言葉にする。

 中でも従来のイメージを大きく覆す描かれ方をしているのは、エイミーだ。ジョーが切望していた欧州旅行を横取りする、甘え上手のちゃっかり屋。そんなイメージが強い彼女が、結婚についてこう語る。

「私は女なの。女の稼ぎで家族を養うなんて無理。結婚した途端にお金は夫名義になり、子どもを産んでも彼の子になるだけ。結婚はお金じゃないなんて、のんきに言わないで」

 時系列に物語を追うのでなく、過去と現在、原作なら『若草物語』と『続若草物語』を行き来するように描かれる。洗練された手法とテンポよい運びで、彼女たちの悲しみと喜びが鮮やかに浮かぶ。米アカデミー賞衣装デザイン賞を獲得したドレスのおしゃれさは、女子心わしづかみものだ。

 従来の映画と全く違うラストも注目だが、最後に紹介したいのは四姉妹の母が働くシーンだ。南北戦争下、北軍を支える奉仕活動をする彼女は、黒人女性の同僚に「ずっと国を恥じてきたわ」と語る。原作にも描かれないこのシーンに監督の意思を感じ、むやみに感動した私だった。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年6月22日号

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