最新映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」は全国順次公開中。次女ジョー役はシアーシャ・ローナン
最新映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」は全国順次公開中。次女ジョー役はシアーシャ・ローナン

 いつの時代も女子の心をわしづかみにしてきた「若草物語」。その最新映画が6月12日に公開された。小学生時代からのフリークというライターが、AERA 2020年6月22日号掲載の記事でその愛を炸裂させる。

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 1949年につくられた映画「若草物語」の中にあのグレタ・トゥンベリさんを見つけたのは、5月21日のことだった。

 NHK BSプレミアムで放送された中で、長女のメグがマーチおばさまに向かって、こう言っていたのだ。

“How dare you.”

「よくもそんなことを」と脳内で自動翻訳した。

 自慢ではないが、英語は苦手だ。なのに確かに聞こえたのは、国連気候行動サミットがあったからだ。2019年9月、まだ16歳だったトゥンベリさんは地球温暖化対策に取り組まない大人たちをその言葉で叱った。17歳のメグは金持ちの伯母から「おまえの求婚相手は、私の財産を狙っている」と言われ、その言葉で猛然と抗議していた。

 状況は全然違う。メグの抗議は字幕では「あんまりよ」となっていた。だけど重なった。主張する女子同士なのだ、メグもトゥンベリさんも。

 原作でも映画でも、メグは主張するタイプとして描かれていないことは承知している。むしろ「主張」が持ち前の妹・ジョーをたしなめる役回りだ。だけど、いざとなったら主張するのだ、メグだって。そして、それが女子というものだ。

 ということを、『若草物語』(ルイザ・メイ・オルコット著)は教えてくれる。だから古びない。出版されたのは1868年。明治維新の年だが、どんな女子がいつ読んでも、「これ、私のこと」と思える。ゆえに1917年以来、繰り返し映画化され、最新版が6月12日から上映中だ。

 可能にしているのが、四姉妹という構図。上からメグ(始まりでは16歳)、ジョー(15歳)、ベス(13歳)、エイミー(12歳)。1章で「あたしは男の人みたいにやりたいのよ! 男に生まれなかったなんて、ほんとに悔しい」と宣言するジョーのモデルは作者だが、他の3人も美人のメグ、内気なベス、気取り屋のエイミーときちんと役割が与えられている。ジョーは文学、ベスは音楽、エイミーは美術と得意分野が割り振られていることもあり、それぞれのストーリーがくっきりしている。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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