岸田文雄首相の「育休中に学び直しを後押しする」発言に、多くの批判の声が上がっている。炎上した背景とともに、「育休中の学び直し」について考える。AERA 2023年2月13日号の記事を紹介する。
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岸田文雄首相が1月27日の参院代表質問で、育児休業中のリスキリング(学び直し)を「後押しする」と述べた発言が炎上した。出産後は家事に加えて、授乳や夜泣きに追われ、自由な時間はほぼないのが実態だ。そんな中で「学び直せ? 暇だと思ってるの?」と、子育て世代を中心に怒りが噴出した。
東京都内の会社員女性(40)は、長男(5)の育休中に妊娠がわかり、復職せずに連続で育休を取ることを決めたとき、男性上司から、「君たちの世代は恵まれている。会社の制度のおかげでたっぷり自由に休めるんだから。それに甘えず勉強しておけよ」と言われたことを思い出したという。
「年子で産み、常にどちらかが泣いて家は散らかり放題。この状況でどう勉強するの、と泣きたくなった」(女性)
SNS上では実際にキャリアアップした人までもやり玉にあげられた。この事態に、「少し冷静になりましょう」と呼びかけるのは、父親の支援事業を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン理事の林田香織さんだ。
「岸田首相は配慮が足りなかった。育休は復職を前提とした制度で、スムーズに仕事に戻るためにも学びたいと考える人は実際とても多い。希望すれば、それがかなうような支援があることは大切なこと」
と話し、炎上騒ぎでその流れが抑制されることを危惧する。自民党の鈴木貴子衆院議員も同じ思いを抱く。5歳と3歳の娘の子育て中で、周囲からは「岸田首相は本気で言ってるの?」という反応が相次いだとしつつも、こう話す。
「キャリアアップや資格取得と考えるとつらいけれど本人が学びたいと思ったら挑戦できる環境は整えていきたい。男性育休をより実のあるものにし、ともに育児を担う体制づくりも必要でしょう」