ただ、このときの恵はまさに長渕イズムを感じさせた。というのも、コロナ禍のような状況においては「戦う」というのがその主義者のとるべきスタンスだからだ。たとえば、6月8日の「スッキリ」(日本テレビ系)で長渕は新曲を紹介しながら「コロナなんかにね、負けてたまるか」と熱く語った。

 また、東日本大震災のときには「復興」と題した文章に「自然が憎い」「地球よ 貴様が狂っている」「私たち人間の力をみくびると ただではおかない」などとつづっていたものだ。

 これには当時、違和感も覚えたが、その後、長渕が航空自衛隊松島基地で行った慰問ライブのニュースを見て、考えが少し変わった。沖縄から被災地に来たという隊員が「今日の出来事で自分が出来る極限が伸びた感じがします」と喜んでいたのだ。こうした戦うスタンスに励まされる人もいるのである。

 恵についても、こういう長渕イズムが根っこにあり、そこに好意を抱く視聴者が一定数いるのだろう。もちろん、これを全開にしてしまうと離れる視聴者も少なくない。「ひるおび!」と「バイキング」(フジテレビ系)の違いはそういうところだったりもする。あくまでふだんはソフトに振る舞い、たまにコワモテを見せるのがいいのだ。

 このバランスが、昼のワイドショーには合っている。争いはあまり好まないが、ときにはキレたいという日本人の気質にもちょうどいいのかもしれない。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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