検察庁法改正や河井前法相夫妻の逮捕など失態続きの安倍政権。御厨貴・東大名誉教授と松原隆一郎・放送大学教授が今国会における各党を評価した。
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御厨:安倍政権はコロナで必ずしも有効かついい政策判断をしたとは思えない。しかし、これまで8年やってきたから、処理能力は基本的にあって、そんなにひどいとんでもない状況は迎えずに済みました。
松原:安倍さんはもともと非常事態が起きると前提して憲法改正をしたいと言ってきた人なのに、非常事態がいざ起きると、何をすべきか真面目に考えてこなかったことが露呈しましたね。
御厨:政治家として課題にここぞと向き合う時の、力のなさが出たんでしょう。安倍さんが側近に語っていると聞いたが、支持率は気にしない、たいがいの問題に国民は反対する。しかし、2、3週間放っておけば、国民の関心は薄れ、また別の問題が出てくる。結局多数をとっている自民党と公明党の言い分が通る。待てば必ず勝つわけです。
松原:この問題は政府と専門家会議との関係にも出ていた。専門家がいくつかのプランを出し、安倍さんがどのプランを選ぶか決める。それは妥当ですが、首相の責任と専門家の役割を明確にしなかった。その結果、首相からは世界的にも珍しいプランを選んだ背景の説明がなく、政治責任も専門家に押しつけて、混乱を招いた。お店を開けていいのか、コロナの疑いがあっても帰宅していいのかわからず右往左往して、国民には政権に対する不満が募った。
御厨:専門家会議は最初は何?という感じでした。権限も実態もよくわからないうちに総理と記者会見に出るようになり、偉い会だということになった。実際には大きな力をもっていた。でも、彼らの発言には政府は何の保証もしていない。この関係を整理しないと、第2波、第3波が来たとき、同じ混乱が起きますね。
松原:クルーズ船での隔離に失敗した段階で、安倍さんたちは厚労省やPCR検査ではダメと見切りをつけた。そこで専門家会議に軸足を変えようとなったのでは。このときにお墨付きを与えればよかったのに。