御厨:マスクの配布とか細かい問題も含めていっぱいあるが、どれひとつとっても国会議員は見せ場を作ることができなかった。

松原:平時のときの頭で動いていて、みんなに10万円をバラマキましょうという公明党のいつものような案が通ってしまった。この点、公明党は頑張ったとも評価できますが。マスクの配布や「うちで踊ろう」にしても、内々に決めて失敗した。これまで通り行き当たりばったりでやるのが基本になっている。G7の中で日本の死者数は抜群に少なくて、安倍首相がこれは日本型だから良かったと突然誇りだすけど、官邸は何もやっていないと思いますね。

御厨:そうです。政治がないんですよ。しかし政治がないからうまくいっているところがある。検察庁法改正は唯一積極的にやろうとした。しかしここに政権の悪いところが出た。これまでの森友問題や桜を見る会の問題とは根底から違うものに手をつけた。その経緯には、13年に集団的自衛権の行使容認派の小松一郎氏を法制局長官にすげかえて、うまくいったという成功体験がある。法の番人と言われた法制局なんて、政権は今や全然怖いと思っていませんからね。

松原:検察庁の問題は読み誤りました。ツイッターでハッシュタグをつけて、検察庁法改正はけしからんというのが、何百万件も集まったり、大きな影響力を持った。安倍さんはそれもさらに無視しようとしたのだろうけど、検察トップのOBらも意見書を出して、これはさすがに種類が違うと理解したのでしょう。

御厨:黒川(弘務)さんが賭けマージャンという本当につまらない問題で失脚したから、最後を見ることができなかったが、もし黒川さんを検事総長にしようとしたら、どうなったか。そうなるところまで本当は見てみたかった気がします。

松原:野党は、全然支持率が上がらないのに、国会の質疑で勝ちさえすればすっきりして喜んでしまう。政権と野党の奇妙な野合関係がずっとある。

御厨:野党は問題があると声を上げるけど、それをどうしたらいいのか生産的な議論ができない。いちゃもんはつけたけど、何かが変わったということはない。

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