■地域の医療体制としては、どのような備えが必要だと思われますか。
今回の当院の例でも分かるように、いったん院内感染が発生すると診療態勢を大幅に制限せざるを得なくなります。そういった医療機関が多数発生すると、周辺の医療機関に負担が集中し、地域全体の医療が崩壊する引き金になりかねません。
そうならないよう、特定の医療機関だけにコロナの患者を集中させないように分散させ、またコロナ患者を引き受ける病院とそれ以外の患者を引き受ける病院とを分けて、役割を分担する体制作りが急務だと思います。コロナに特化した地域連携の体制作りが必要です。
地域の基幹病院としては、今回の経験を生かし、当院がたどった経緯や問題点、有効な対策などを発信したいと考えています。他の医療機関の方々には、それを参考にしつつ、各病院の状況に合った対策を十分に練っていただくことが、今後の一つの方策になるのではないかと思います。
(文・梶葉子)
【プロフィール】
有吉孝一医師/1991年福岡大学医学部卒。沖縄県立中部病院の外科レジデントを経て、93年神戸市立中央市民病院(当時)で救命救急センター専攻医。佐賀大学医学部准教授、同附属病院救命救急センター長などを歴任。2010年神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター救急部長、13年から同センター長。