「本当は消毒やプリントの持参、報告に費やす時間を授業準備に充てたいんです」(女性教師)

 いまは休校中の遅れを取り戻すため、1日7時間授業で土曜日も授業がある。今年度からの新学習指導要領に合わせ教材も作り直さなくてはならない。自宅学習でペースが乱れてしまった子のために、個別の補助教材も作ってあげたい。

 だが、朝6時半から夜9時半まで働いても、感染対策の雑事に追われ、とても時間が足りない。女性を含め校内のほとんどの教員が土日も出勤している。

「仕事量は倍増しました。終わりが見えないし、もはやどこまで耐えられるかという感じ。でも一番つらいのは、自分が納得できていないことを児童に指導しなくてはならないことです」

 海外からの帰国児童に「校庭で遊ぶのにマスクの意味ある?」と聞かれ、答えに窮(きゅう)した。

「先生もそう思う。でも、『どんな時もマスク』が暗黙の了解で、みんな従うのが日本なんだよね」

 合理性より同調圧力。それを仕方のないことだと説明する自分に矛盾を感じた。

 神奈川県の私立小学校に勤務する女性教師(45)は、いまの学校の対応は「感染者が出た場合に、ここまでやってましたとエクスキューズするためのポーズでしかない」と憤る。女性の学校は私立なので、何かあった時に受験者が減ることを心配しているのではと感じている。

 1クラスは約20人。普段から教室には十分な余裕もあるのに、分散登校を続ける。

「しかも子どもたちには、『しゃべるな、くっつくな』と指導しろと。子どもたちはいじらしく、タッチしない鬼ごっこや、ボールを投げたフリ、当たったフリをするエアドッジボールなどをしています。私は感染のリスクより、子どもたちのストレスのほうが気になります」

 2メートル以上の距離を取り、マスクをしているので、互いの声が聞き取りにくい。新指導要領の目玉は「主体的・対話的な深い学び」のはずなのに、対話は禁止。黙って教師の話を聞く一斉授業に逆戻りした。朝の会で一曲歌うだけで子どもたちは気持ちが晴れやかになるのに、歌は禁止。マスクをしていれば、歌ってもいいのではないか──。日々悶々(もんもん)とする。

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