特にひどかったのが、同期の男性社員に対するお局のえこひいき。その男性社員がミスをしても、同期であるという理由だけで、関係のない伊藤さんが代わりに謝罪へ行かされた。周囲の社員たちは“大丈夫?”と心配はしてくれるものの、お局に対する恐怖から、身をていしてかばってくれることは無かった。

 その後、伊藤さんは異動し、いびられることもなく新しい部署での業務をスタートさせた5年目。会社の吸収合併が決まった。その時、社内で募集された早期退職に伊藤さんは名乗りを上げた。蓄積した会社に対するネガティブな思い、そして大学時代から憧れていた物書きへの夢をかなえるためだった。

「未練はありませんでしたが、仕事を辞めることは怖かったです」

 やはり「銀行員」という肩書がなくなり、「会社員」という安心感が無くなることに対する不安は大きかったという。

 それでも“人へ伝える”という信念を持っていた伊藤さんは、次の就職先でwebライターとして活動することを決めた。転職エージェントを活用し、転職活動をスタート。学生時代の就活ゼミでの経験を生かし、自分の魅力を売り込んだ結果、3カ月ほどで転職に成功した。

 そして現在は会社から独立し、フリーのライターとして活躍している。
 私生活では32歳で結婚。俗にいう“結婚適齢期”で人生のパートナーを見つけた。

「相手に求める条件の中に、経済的な豊かさはありませんでした」

 男性の価値を職業、学歴、年収などで決めたがる女性が多いなか、伊藤さんは違った。それには、今までの生い立ちが関係しているという。

「機能不全家庭で育った私を理解してくれようと寄り添ってくれたことが結婚の決め手です」

 家族の温かさを知らずに育った伊藤さんとしては、そこは譲れない部分だったと語る。ご主人との居心地の良さを大切にした結婚だった。

「将来のことを考えると、正直お金はいくらあっても足りないです。でも無ければ無いで、それなりの生活を楽しめば良いわけですから」

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「専業主婦になって」と言われたら結婚していなかった