第2の「就職氷河期」に社会に出た伊藤さん(撮影/吉田みく)
第2の「就職氷河期」に社会に出た伊藤さん(撮影/吉田みく)
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 バブル崩壊後の1993年~2004年ごろに高校や大学を卒業した世代は「就職氷河期」と呼ばれ、約1700万人いるとされる。新卒の就職競争であぶれた氷河期世代の多くは非正規社員となり、ニートになった若者もいる。08年にはリーマンショックが発生し、多くの非正規社員の“派遣切り”が社会問題となった。ここから数年間で社会に出た若者は不況にあえぐ企業の影響を大きく受け、第2の「就職氷河期」ともいえる。この世代は、上とはまた違う悩みを抱えながら人生を歩んでいた。

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 都内に住む伊藤雅子さん(仮名=34)は、リーマンショックが発生した08年に就職活動を行い、採用打ち切りと内定取り消しを経験した。大学時代は「就活ゼミ」に参加するなど、就職活動に対する意識も高かった。

「打率は良かったほうだと思います」

 新卒時は80社ほどの企業にエントリーして、40社以上で選考に進んだ。就活ゼミの中でも“優等生”だったという。予想以上にスムーズに進む就職活動に楽しさすら感じていたその時、あのリーマンショックが襲ってきた……。

「ただ、発生直後はそれほどショックはありませんでした」

 就活の一環で新聞を熟読する習慣が身についていたという伊藤さん。新聞で世界の情勢を知ると、影響が日本にも及ぶのは時間の問題だと思っていたからだという。

 日本企業の対応は早かった。伊藤さんの元にも、内定していた3社から採用打ち切りの連絡が来た。もちろん落胆はしたが、伊藤さんはまだ気持ちに余裕があったという。

「すでに何社からも内定をもらっていたので、まだまだ大丈夫だろうと。むしろ、本音では『何で私を切るの?』くらいに思っていました」

 本当にリーマンショックの影響を肌身に感じたのは、全国に支社を持つ建設会社から内定取り消しの連絡が来た時だった。今までとは比べものにならないくらいショックが大きかったという。なぜなら、伊藤さんの中ではこの会社へ入社する意思を固めていたため、他の内定先は既に辞退していたからだ。“就活エリート”だったはずの伊藤さんは、一転して、内定ゼロという窮地に追い込まれた。

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食事でも「誰もしゃべらない」家族