「毒舌芸を披露する彼らは、現場をピリつかせないように“中和”させるテクニックを持っている。例えば有吉はすごくニコニコしながら辛辣なことを言う。マツコは素人にも厳しいことを言ったりするけど、『お前気に入った!』とか、『これやるよ!』などといって最終的には相手を可愛がる素振りを見せる。だから現場が静まり返るどころか、むしろ笑いが起きる。言われた相手もおいしい思いができる。山里もきついことを言ったりするわりに、ビビリなキャラを演じて弱い部分をあえて見せる。それらはすべて芸であり、芸とは『演じる』ということでもあるのです」

 では、“毒を吐かれる側”はどう考えていたのだろう。2012年にテラスハウスに出演していた「ちゃんもも◎」(出演時は竹内桃子)は、『木村花さん出演の「テラスハウス」 元出演者が“やらせ疑惑”について実名告白』(5月29日配信)でのAERA dot.のインタビューに対し、スタジオメンバーの毒舌芸に理解を示している。

「スタジオメンバーのYOUさんや山里亮太さんの存在が、人間のリアルな感情や愚かさを、愛嬌のある『笑い』に変換していたと思います。出演者が視聴者から本気で恨まれないように」

 しかし、こうした毒舌芸には、常に否定的な意見がついてまわるのも事実だ。いじめ問題について研究している明治大学の内藤朝雄准教授は、「決して許されない」と、毒舌芸を真っ向から否定する。

「テレビに出ている芸能人は労働者であり、彼らには人権がある。例えば『外国人だから暴力をふるってよい』なんてことが許されるわけがないですよね。『テレビだから』という理由で『毒舌芸』と称して侮辱や罵倒することは決して許されない。メディアがそれをエンターテインメントとして扱えば、それが許容されるものとして社会に浸透します。この罪は大きい」

 視聴者の怒りや不満を代弁し、それを笑いに変える毒舌芸。それを実行する芸人たちは、さまざまなリスクにさらされている。

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毒舌芸には難しいかじ取りが求められている