

自宅飲みの安心感から、ついついお酒を飲みすぎていないだろうか。気づいたら寝落ちや記憶を失くしていたら、問題飲酒の可能性が高い。放置すればアルコール依存症に陥りやすくなる。AERA 2020年7月13日号は、依存症に陥る前の対処法を考える。
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アルコール依存症の人は、脳の司令塔とも言われる前頭葉の前部(前頭前野)が萎縮していることが画像検査などで証明されている。意思決定、理性的な思考や判断、感情に関わる部分で、前頭前野の働きが低下すると、飲酒欲求を制御することが難しくなる。だから、自力では飲酒をやめられなくなるのだ。もし、自分の飲み方に多少なりとも不安を感じているなら、自力でやめられなくなる前に、飲み方を見直すべきだ。
「不安を覚えた時、人は2通りに分かれます。本当に問題を掘り下げて見られる人と、掘り下げる前に現実から目を背けてしまう“寸止め不安”の人と。アルコール依存症に陥りやすいのは、後者です」
耳に痛い指摘をするのが、東京歯科大学市川総合病院精神科部長の宗未来さん。酒をこんなに飲んでいいのだろうかと不安を覚えながら、一方で「そんなに問題ないだろう」と、自分の中で不安を寸止めして、飲んでしまうのだという。数々の「損失」があるにもかかわらず、それを問題飲酒と捉えず、現実に目を背けたまま、お酒を飲み続ける現在の姿勢こそが、すでにアルコール依存症まっしぐらだというのだ。
「依存症への一歩をすでに踏み出している。たかが一歩、と思うのは、あまりにもポジティブすぎる」(宗さん)
今やるべきことは、自らの飲酒の仕方が問題飲酒かどうかを見極めること。その上で講じるべき手段を、アルコール依存症ケアを長年行う「大船榎本クリニック」精神保健福祉部長の斉藤章佳さん(精神保健福祉士・社会福祉士)がアドバイスする。
まず、記録をつける。お酒を飲まなかった日や適正飲酒量の日、多量飲酒の日など、カレンダーに色分けしてカラーシールを貼るといい。飲んだ量を一目瞭然にして、自分の心身の状態を見直すきっかけにする。