この結果、主要なデータがクリアできたニューヨーク市では6月22日からフェーズ2に入ることになり、レストランはテラス席なら、小売店の店内販売、ヘアサロン・理髪店などの再開がOKとなり、7月6日からはさらに緩和が拡大されるフェーズ3となった。なので、私も伸び放題だった髪の毛をようやく散髪することができた。この先、渡航規制などが緩和され、飛行機の増便が見込めれば、ようやく日本に戻ることもできそうだ。
同時に、市内の病院に出かけて、念のためPCR検査と抗体検査を受けた。現在、ニューヨーク市では希望者は、症状の有無に関わらず、無条件、無料で検査を受けることができるようになっている。
PCR検査は、鼻の奥に綿棒を入れて粘膜を採取するスワブ法、抗体検査は採血によるものだった。防護服を来たナースが、手際よく採取してくれた。サンプルは民間の検査会社に送られ、結果は、数日後に、ネットの個人ポータルサイトに届く仕組みである。
■PCR検査の結果は…
さて、結果は、両方とも陰性だった。これはすなわち、現時点で感染していないし(ウイルスRNAなし)、過去に感染したこともない(抗体なし)ということを意味している。
自己隔離中、風邪や肺炎症状はなかったが、これだけの感染中心(ニューヨーク市だけで総計20万件の感染者)にいたから、知らないうちに感作しているかもしれないと思ったが、そのようなこともないようだ。
ただし、抗体検査の解釈には注意が必要だ。中国の大規模な解析データの論文などによると、たとえ感染した患者でも、数カ月のうちに血液中の抗体が消えてしまうケースが多々見つかったからである。これがほんとうなら、一度かかれば二度とかからないとか、集団免疫が形成される、といった希望的観測にも疑問符が着く。なので、抗体検査が陽性だったことを持って、免疫ライセンスになるという考え方も慎重である必要があることになる。逆に抗体検査が陰性だったからといって、過去に感作していないとも言い切れないことになる。
○福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。
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