かつてはイチローや松井秀喜がメジャーで大活躍していたころ、右投げ左打ちの打者が増えた。一塁までの距離が少しでも近い左打者が有利という点もあるのだろう。しかし、野球は左打者だけでオーダーを組めるわけではない。プロ野球で右の強打者が増えれば、幼少期にすぐに左打ちに転向するようなことも、さらに減るのではないかな。
ファームを見ても、中日のドラフト1位の石川昂弥や阪神ドラフト2位の井上広大など、楽しみな右の大砲が心技体を磨いている。
投手ももはや150キロが剛腕と言われる時代は過ぎた。155キロを超える選手も各球団にいる。大リーグでは100マイル(約161キロ)が剛球投手の目安ともなっている。体と技術はひと昔前とは比べものにならないほど進んでいる。
だからこそ、同時に心も磨いてもらいたい。飛距離や球速だけでは通用しない時代である。どんな状況におかれても、自分の技術を発揮できるメンタルの部分である。心だけは、人によって性格もあるから、何が正解というものは見つけにくい。自分なりに答えを探す作業となる。
ファンの方々の声援も選手を成長させる一助となる。いち早く日常に戻る日を望んでいる。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2020年7月24日号