それが「日本橋地域の魅力向上と、景観や環境の改善に貢献していきたい」(首都高速道路広報)という開発に至ったのだから、天と地がひっくり返るような転換と言えるのではないか。

 最終回「サヨナラ・トウキョウ」で開高はこう書いた。

<東京は日本ではないと外人にいわれるたびに私は、いや、東京こそはまぎれもなく日本なのであると答えることにしている。都には国のすべての要素が集結しているのだ。(略)私はこの都を主人公にして一つの小説を書こうとも考えて探訪しつづけてきたのである>

 主人公であるその首都で今、起き始めているパラダイムシフトを知ったら、続編を書く、と言いだすかもしれない。

「漂えど沈まず」「悠々として急げ」「朝露の一滴にも天と地が映っている」……言葉の魔術師は、2020年の東京をどんな文句でとらえるだろう。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2020年7月31日号より抜粋

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