加えて重要なのが、口のなかの細菌環境を整えるために、唾液の量を増やして「唾液力」をUPさせることだ。

 実は、唾液は口に入ったウイルスや菌を中和して、感染から防いでくれる。99%は水分だが、残り1%に抗ウイルス・抗菌作用を含む成分が入っているという。

 唾液腺健康医学の第一人者でもある槻木教授が注目するのは、免疫作用を持つIgA(免疫グロブリンA)という成分だ。

「口内に細菌やウイルスが侵入すると、IgAが素早く見つけて細胞内に取り込み、のどや舌など粘膜につくのを防ぎます。IgAにくっつかれたウイルスや細菌は中和されて感染力を失う。あとは、唾液がIgAごと流した胃の中で、ウイルスや細菌は消化され死滅すると思われます」

 唾液をいっぱい出すには、口まわりの筋肉を刺激する舌の体操がいい。やり方は簡単。1分もかからない。

【1】舌をべーっと出したり、のどの奥へ引く。
【2】舌を左右に動かして口の両端をなめる。
【3】舌で鼻の下やあごの先を触るように上下に動かす。

 三つの動作を1日2~3回繰り返すといい。

 ほかにも口を開けたり閉じたり、頬を膨らましたりすぼめたりするのもいい。

 これはもともと、食べ物をのみ込む機能の衰えを予防する嚥下体操だった。あごや舌の筋肉を動かすことで唾液腺を刺激して、分泌量を増やすという。

 見覚えがある動作と思ったら……「顔筋」を鍛えてほうれい線やたるみに効く、と言われる美容体操にそっくりなのだ。実際に、小顔やシワのケアなど美容と唾液を出す舌の体操を組み合わせて唱えている歯科医師らもいた。

 コロナなどのウイルスに負けない舌ケアは、美容効果も手に入り、どうやら一石三鳥くらいの効果がありそうだ。(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2020年7月31日号