実は、記者が食べたスナックは「未来コオロギスナックII」でコオロギを使ったスナックの第2弾だった。2017年に発売した「初代」は粉末を練り込んだ商品ではなく、コオロギを丸ごとローストしていた。つまり、手足や触角のついたコオロギの素揚げ。開発に半年を要したが、ぜんぜん売れなかったという。
「置いてくれるのは雑貨屋ばかり。半分以上は断られていました。スーパーやドラッグストアに置いてもらいたかったのですが…」(同)
コオロギを目立たせようと、スケスケの透明なパッケージで中身を見えやすくしていたことが、手に取りにくさに拍車をかけた。見た目や先入観のせいでコオロギの魅力が伝わらず、食べてもらうどころか置いてもらうことすらできない状況に、悔しさだけが募った。
こうして大失敗に終わった第1弾。しかし、ここで諦めては、みんなで日本をハッピーにすることはできない。「昆虫食はゲテモノ」という先入観を払拭(ふっしょく)しようと、それから約半年間、新製品の開発にいそしんだ。
前作の反省を踏まえ、続編となる「II」は、ライトなパッケージに。食べやすいようコオロギは粉末にし、スナックの生地に練り込んだ。
今年3月の発売後、SNSなどの口コミでじわじわと広がり、5月には日経トレンディの「下半期ブレイク予測」の食品部門で紹介された。
売り上げは非公表だが、「相当増えました。予想以上で、生産が追い付かない状況です」(同)。7月17日時点では品切れ状態(通販と店頭在庫のみ販売)のため、急ピッチで生産している。
そもそもなぜ、「コオロギスナック」を作ったのか? 発案は4年前にさかのぼる。国連食糧農業機関が食糧難を解決する手段として昆虫食を推奨しはじめ、世界中で昆虫食を推進する機運が高まっていたころだった。
「日本の先駆けとして、昆虫食でお菓子を作ってみたい!」
この思い付きを端緒に、社員たちのアイデアが膨らんでいった。これまでも、ゾンビをイメージしたスナック菓子「ゾンビスナック」など、攻めの独自商品を打ち出してきた同社。企画会議でも、すんなり「GO」が出た。
昆虫の中でも、なぜコオロギを選んだのか。