昆虫食は近所のスーパーで手軽に買える時代に――。ライン生産されたコオロギスナックがいま、大人気。うそのような本当の話だが、その人気の秘密を探るべく、記者も食べてみた。そこから見えた「深淵なコオロギの世界」とは……。
【フォトギャラリー】よく見ると触覚や足が…大人気のコオロギスナックとは
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7月のある日、上司から珍妙な差し入れを頂戴した。手渡されたのは、コオロギ粉末が練り込まれたスナック菓子「未来コオロギスナック」。近所のスーパーで見つけたらしく、「気になるから、食べて、記事書いて」と食レポの任務を振られたのだった。
記者は大の菓子好きで、チョコやスナックをランチ替わりにすることもざらにある「偏食記者」。上司は「お菓子、好きだよね」と笑顔で圧をかけてくる。菓子は好きでも、残念ながら「昆虫食」の趣味はないのだが…。「う~む」としぶしぶ手に取る。この時は「どうせゲテモノの類だろう」と、高をくくっていた。
パッケージには、ポップなコオロギのイラストが描かれている。つぶらな瞳のコオロギが地球の上に居座っているシュールな構図。上部には「コオロギは地球をすくう」というキャッチコピー……。
一方、その味付けが気になった。「近未来ラーメン味」とパッケージに書いてある。おそるおそる袋を開ける。ほんのりと米のような香りがする。イモ虫のような形状のスナックをつまんで、口へと運ぶ。サクサクッ。小気味よい音とともに、香ばしい風味が広がる。このラーメン味、なんだかコクがあってやみつきになる。やめられない、止まらない。あっという間に1袋を平らげてしまった。
製造元は、「株式会社MNH」。MNHは、「M=みんなで N=日本を H=ハッピーにする会社」の略だという。どうみても怪しい。商品の詳細を聞くべく、同社に取材した。
対応してくれたのは、営業担当の田中彰悟さん。コオロギスナックの売り上げについて聞くと、「すごく売れていますよ」と弾む声が返ってきた。レッドオーシャンと化している日本のスナック市場。有名メーカーのロングセラー商品や新商品が所せましと並ぶスーパーの商品棚から、いったい誰がコオロギスナックを選ぶのか。
「比較的若い世代が多いです。面白がって買っていくパターンが多いですが、中には環境問題に関心のある学生なども手に取ってくれています」(田中さん)