「私たちは避難所運営や家屋の清掃など、コミュニティーのなかで被災した方と一緒に課題を見つけ、解決していくことを得意としています。災害支援活動のなかでも人との接触が多くなりやすいとも言えます。地元行政や社会福祉協議会からの要請がない段階での派遣は難しいと考えています」

 JVOADが定めるガイドラインでもコロナ禍における県外からの支援について、「地元の意向に配慮すること」を筆頭に挙げるが、「地元」の声は決して一枚岩ではない。感染拡大を恐れる声が大きい一方で、目の前の復興活動を最優先すべきだとの意見も根強いのだ。PBVにも、16年の地震や17年の九州北部豪雨で共に活動した地元の支援団体からのヘルプコールが届く。それでも熊本では、全体の「空気感」は受け入れに慎重だ。背景には、発災以降相次いで発覚した県外からの「ウイルス持ち込み」がある。

 7月13日、香川県高松市から応援職員として派遣された保健師の新型コロナ感染が確認され、熊本県では立ち寄った避難所などで消毒作業が行われた。また、16日には出張取材中だった時事通信カメラマンの感染も発覚。これを受けて人吉市は、市の公共施設への県外からの来訪を原則禁止している。

「一度クラスターが出てしまうと、医療体制や住民感情へのダメージは取り返しがつかなくなります。この二つの事例で、より受け入れを慎重に考える人が増えた印象です」(明城さん)

 ボランティアらの県外からの受け入れには、地元医師会などが強く反対しているとも報じられる。一方で、支援の遅れがあらゆる問題を生み出しかねないのもまた事実だ。地元に拠点を置く災害支援団体レスキューアシスト熊本の吉住健一さんは言う。

「災害ごみがいたるところに集積されていますし、まだまだ手つかずの被災家屋も多くあります。今やっている作業を放置して次に行くことはできないけれど、誰も作業に入っていない家を目にしながら何もできないもどかしさを常に感じています」

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