九州の豪雨被害を受け、一刻も早い復旧活動が必要だ。だが、コロナ禍が立ちはだかる。県外からボランティアが入れず、支援団体も直接的手助けが難しい。支援と感染防止の両立が課題だ。AERA 2020年8月3日号では、コロナ禍の被災地支援に迫った。
【写真】ボランティアに訪れた人たちが受付時にマスクを着用して検温した
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コロナ禍のなかで起きた九州豪雨は、災害支援の在り方を揺るがしている。東日本大震災以降の大規模災害では、全国からボランティアや災害支援団体が集まって復旧作業にあたってきた。しかしいま、被災地を覆うのは全く違う光景だ。九州豪雨で最も被害が大きかった自治体のひとつ、熊本県人吉市などで活動する支援団体メイクハッピー理事長の谷口保さんは言う。
「災害後の被災地には普通、良くも悪くも活気があります。発災2週間程度たった今の時期は、予定の調整もついて全国から続々と人がくるころ。でも、それがありません。場所によってはボランティアの姿を全く見かけず、被災者も応援の声を実感できずに疲れ果てています」
7月22日現在、九州豪雨の被災地に立ち上がったすべての災害ボランティアセンターが、ボランティアの受け入れを県内または市町村内在住者に限定している。人吉市と球磨村の合同ボランティアセンターでは、10日の開所から20日までに県内から延べ2829人を受け入れた。18日、19日の週末には1日500人を超える人が集まったが、平日は100~200人台の日が多い。被災者から寄せられた依頼445件のうち、完了したのは2割弱の78件に留まる。手つかずの案件もあり、今後より細かなニーズ調査が始まれば要請はさらに増えると予想される。
武田良太防災担当相は12日、NHKの番組で「ボランティアの出足が非常に悪く、絶対的なマンパワーが足りない」と発言した。実際にはキャパシティーに限りがあって受け入れ人数を制限している自治体もあり、純粋な人手不足だけの問題ではないが、過去と比べても“数字の差”は明らかだ。2018年の西日本豪雨では、岡山県倉敷市だけで多い日には1日2千人超のボランティアが集まった。