被災地入りできないのはボランティアだけではない。日本の災害現場ではこれまで、行政や自衛隊などの公的組織やボランティアと並び、NPOなどの災害支援団体が大きな役割を果たしてきた。支援団体はそれぞれの得意分野を生かし、行政と協力して避難所運営を補助したり、浸水した家屋の床下清掃や消毒、重機を使ってのがれき撤去など一般ボランティアでは対応できない案件を担ったりする被災地では欠かせない存在だ。だがいま、県外に拠点を置く災害支援団体の多くが、被災地での直接的な支援を見合わせている。
前出の谷口さんらは被災地入りしている数少ない県外団体のひとつで、スタッフはいずれも感染者の少ない地域から人との接触を極力避けて車で九州入りし、支援活動に入る前に自費診療でPCR検査を受けるなど万全の態勢をとっているが、東京などに拠点を置く団体の被災地入りは現状では極めて難しい。
災害支援団体同士の連携や行政とのつなぎ役を担う全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)事務局長の明城(みょうじょう)徹也さんはこう話す。
「被災者に対する人道支援の最低基準を定めた『スフィア基準』では、“被災者には支援を受ける権利がある”ことと“支援によって被災者や被災地のリスクを高めてはならない”ことが明記されています。今回のコロナ禍では、その両立が大きな課題として突きつけられています」
東京に本拠を置き、災害時の緊急支援を行うピースボート災害支援センター(PBV)も今のところ、現地での直接的な支援活動を行っていない。通常ならば発災後2~3日以内に先遣スタッフを派遣して被害状況や支援の集まり方を調査し、1~2週間後には選定した活動先にスタッフを常駐させる。そして、必要に応じて全国からボランティアを受け入れて活動してきた。しかし、今回は地元団体への資機材提供など間接的支援に留まっている。新型コロナの流行を受け、九州豪雨の発災前からスタッフへの感染予防研修や在宅勤務の導入を行って派遣に備えてきたが、今の段階でスタッフを送ることは難しいという。理事の小林深吾さんはこう話す。